さて、キリマンジャロのお話に戻ります。今回は山小屋事情です。
キリマンジャロの「マラング・ルート」は基本的にすべて山小屋での宿泊です。他のルートはテント泊で登っていくらしいですが、やはり体力の消耗度合いは段違いのよう。というのも、私と同じ時期に出発し、別のパーティに所属するという、明らかに私よりも体力のある若者男子がいまして、出発前に紹介していただいた際に「現地であったら励ましあおうね! ていうか私を励ましてね!」なんて言っていたのに、その彼はテント泊で疲労していたためか、4700mで高山病が悪化し登頂アタックに挑めなくなってしまったそうです。やっぱりテント泊は体力的に消耗するのでしょうか。
山小屋の内部は、こちらにアップしたように、二段ベッドが並んでいるタイプのお部屋です。各ベッドにはマットがあり、広いお部屋の場合は枕もあったりします。日本人にとって大きさは十分。そこに持参したシュラフを敷いて寝ます。最終日以外はダイニングの上の広いお部屋だったので、男女同室で。最後の日だけは小さいハットが割り当てられたので、男女別になりました。暖房装置などはなく、寒いので、うんと着込んでモコモコになって生活します。
電力はソーラーパネルで蓄えます。なので余計な電力はなし。当然、コンセントなんていうものはなく、カメラもスマホも充電できません。なので、大量の電池+充電機器や、カメラのバッテリーパックなどを日数分持ち込む必要があります。ちなみに私は電子機器が使えなくなった際の保険として、昔なつかし「写ルンです」を持っていきましたよ! また、いちおう、通信電波は届いているようですが、もちろんFree Wifiなんてもんもございません。タンザニアに対応している海外用Wifiルーターを持っていけばデータ通信もできるんでしょうけれど、せっかくなのでデジタル断食です。
興味深かったのが、ホロンボハットにあった「救急車」。高山病が悪化した場合は下山する必要がありますので、これで降ろされるそうです。我々のパーティのメンバーは幸いにもそういった羽目にはあいませんでしたが、なんとお願いしていたポーターさんが2人ほど、高山病で下山されました。高山病に「慣れ」は関係なく、誰でもなりうるものと聞いていましたが、この出来事を目の当たりにして実感しました。
山小屋で「しなければならないこと」はなく、基本的に、到着すると着替えて、洗面器でお湯をもらって、ティータイム。このティータイムはたとえ夕食の時間が迫っていても基本的に飛ばすことはなく、キッチンボーイたちがお茶の準備をしてくれます。水分をたんまりとるためにも必要な時間です。あとは写真をとったりして、基本的に9時頃には消灯。朝は6時頃に朝日を眺めるという、大変健康的な生活を送ることができます。
プライベートな空間はいっさいなしですが、そこはみんな大人で、人にあわせて疲れるなんてことはせず、結構自分のしたいように過ごしていました。それはこのパーティだったからかもしれませんが、疲れたときには一人でシュラフに入って居眠りをしたり、持ってきた本を読んだり、すてきな風景があれば写真を撮り合ったり、外でオカリナをふいている子もいました。たとえば田舎町というと息苦しい干渉があり、都会では個人主義が膨張して病に繋がったりと、極端な例ばかりが目につくけれど、こんなふうに集団でいながら個人の領域を守れるようなスキルを育んでこそ、居場所の選択にも可能性がかなり広がるような気がします。なんて言いながらも、帰国後キリマンジャロ五月病にかかってしまい、あああの大自然が恋しい日本には空がない、なんてつぶやいちゃってた私ではありますが!
#10 Day3 高度順応日のゼブラロック・ハイキング
#11 月明かりの影ができる場所で
#12 Day4 いよいよキボハット(4,720m)へ
#13 ガイド&ポーターのこと
#14 Day5 登頂アタック5895mへ
#15 Day5 頂上からのハードな下山
#16 Day6 さらばキリマンジャロ
#17 アルーシャへ移動
#18 Day7 サファリ〜帰国へ
#19(最終回) 持ち物いろいろ