【キリマンジャロに登ってきた】#8 登頂へ導く毎日の「食」

ここでキリマンジャロ登山中のお食事について、記しておきましょう。周囲から最も聞かれる話題でもあり、やはり人は、食ありき。アフリカの非日常かつ体力を要する環境でナニを食べていたのか? それがどのようにもたらされていたのか? は、やはり、行く前に一番気になったポイントでもあります。

毎食提供されるトーストの山
毎食提供されるトーストの山

誰が作ってくれたの?
お食事は、専属のコックさんがずっと作ってくれていました。コックと言っても、タンザニアの若い男子3人です。サーブしてくれるのはキッチンボーイなので、道中、コックさんと顔をあわせることはありませんでした。調理は宿泊する山小屋と離れたところでなされていたことも理由のひとつ。下山後のセレモニーで、全員と顔をあわせて握手やハグをしたのですが、「えっあなたが!」というような、フツーのそのへんにいるような男の子たちでした。しかもセレモニーの間ですら、我々のごはんを作ってくれていた。あの素朴な味やおかゆの煮え具合なんて、もう少し疲れてきたら「嫁に来てくれ」と口説いていたかもしれません、ホント。

ベジタブル、マシュルームと毎回味が変わるスープ。でも奇をてらっていない、素朴な美味しさ。
ベジタブル、マシュルームと毎回味が変わるスープ。でも奇をてらっていない、素朴な美味しさ。

何を食べていたの?
キリマンジャロ登山前は、食事に期待しちゃイケナイと、口をすっぱくして言われ続けておりました。ついに何も喉を通らなくなったときに備えて、日本食のインスタントを持ち込めとも。しかし、今回は嬉しい誤算で、とっても美味しいお食事でした。キリマンジャロに10数回登っている隊長史上でも、こんなに美味しかったことはないとのこと。

普段の生活よりも豪華?
普段の生活よりも豪華?

何がよかったかって、まず朝ごはんに、毎回おかゆが出てきたことです。海外のおかゆと言えば、甘くドロドロに煮詰めてあったり(いわゆるライスプディングってやつね)、まったく白米にいらんことしなや、と言いたくなのような代物がどうどうと出てくることが多い。しかし、この毎朝食に現れたのは、日本純正の五分粥。オーいえー!

ポーターさんには本当に感謝です。この大量のお米、トースト、調味料類、お茶や飲み物の元、お皿、お鍋、ガラスのコップ、ジャガイモ、ウインナー、緑黄色野菜類、マンゴー、みかん、パパイヤ、アボカド、スイカも運んでいただき。チキンは丸ごと持ち込んで、一日目に湯がいて酢漬けにして保存していたそうです。どうりで日が経つごとに、肉がやわらかくなっていったわけだ。

大皿の料理を少しずつとって食べる。余っても絶対に捨てはしないそう
大皿の料理を少しずつとって食べる。余っても絶対に捨てはしないそう

面白かったメニューとしては、パイナップルの天ぷら。バナナの天ぷらはよく見られる異国メニューですが、パインは衝撃でした。最終日近くに出てきたので、おそらく火を通したほうが良いと判断されたと推測します。

はやりもの
限られた食材の環境においては、必要は発明の母という現象がおこりがちです。すなわち、おかゆに何をかけるか? というところで眼の前にある調味料をいくつか試したみたところ、なんと、チリソースをちょっぴりかけると、その酸味がまるで梅干し味に変わるという発見がありました。

このおかゆが我々の道中を支えていた
このおかゆが我々の山行を支えていた。チリソースが必要不可欠

飲み物の主流は、キリマンジャロティー。タンザニアはコーヒーと並んでお茶もたくさん作られていらしく、紅茶を何杯も飲みました。蜂蜜を入れてのむとまろやかでまた美味しい。普段の生活では飲まないミロも新鮮な味で、これにココアやミルクパウダーを加えたりするアレンジも流行りまして。やっぱり歩いて疲れていることや、朝夕は冷えることもあり、甘いものが美味しく感じます。

私のお気に入りのキリマンジャロティー。お土産にも購入しました
私のお気に入りのキリマンジャロティー。お土産にも購入しました

食事には朝夕ともにトーストが出されるのですが、甘くないピーナッツバターの瓶が毎回添えられていて、日本では色々考えちゃってやりづらい「ピーナッツバター大盛り」に加え、そこに蜂蜜をたんまりまぶすという、禁断の美味を楽しんだりもしました。

ピーナッツバターを塗りこめる幸せ
ピーナッツバターを塗りこめる幸せ

ちなみに。こんなに流行ったものたちについて、山にいる間は「土産に買っていこう」と話しておりましたが、下山するとつきものが落ちたように欲しくなくなりました。(キリマンジャロティーは買って帰りましたが!) やはり人間は、その場その場に順応して行きているものなんですねえ。

登山中のお弁当
お昼はランチボックスを、登山途中でいただきます。中身はだいたい同じで、チキン、ゆで卵、炭水化物。卵はお塩がありませんが、味が濃くて美味しい。黄身が白っぽいのですが、どちらかというと日本の黄色い黄身のほうが不自然なのでは? と思ってしまいました。炭水化物はカップケーキやビスケット、パンやドーナツなど出来合いのもの。これにパックのマンゴージュースやピーナツ、ポテトチップスが添えれている感じ。そして毎回、ポットに入れた熱いお湯を運んでくれていて、あつあつの紅茶やココアをいただけるのが嬉しかったです。

これは初日のランチ。炭水化物まつりでした
これは初日のランチ。炭水化物まつりでした

これは二日目。ボリュームはこれでも十分でした
これは二日目。ボリュームはこれでも十分でした

縁の下の力持ち
我々は高山病予防でダイアモックスという薬を飲んでいましたが、この薬は副作用として、味覚が鈍くなるとのこと。それがかえって都合良いんですよ、なんていわれていた悪名高き食事は、こんなに日々の楽しみとなり、元気にご飯を食べていたこと、特に登頂アタック開始の真夜中の出発前まで、美味しいおかゆを出してもらえたこが、パーティ全員登頂という快挙につながったのでございましょう。

ディッシュウォッシャーもこの大量の食器を寒い中毎食後洗ってくださったわけです。ちなみによく、海外旅行では、食器や調理器具が生水で洗ってあると危険、なんてよく言われますが、この厳しい状況ではそのへんで汲んできたお水で洗ったものでもへいちゃらです。この環境での、衛生観念がとっぱらわれる感じ、私には非常に心地よかったです。

果物も豊富。スイカ好きの私には天国でした
果物も豊富。スイカ好きの私には天国でした

下山後は
そんなお食事事情でしたが、下山したとたんに全員が飲みたかったのが、コカコーラ。ゲートの売店にて、1US$で買ったそれは、本当に命の水のようでした。それはもう、急いで飲んだため胃に炭酸が充満して呼吸困難になったほど!

コカコーラの瓶がやけにスリムだった。右はキリマンジャロビール
コカコーラの瓶がやけにスリムだった。右はキリマンジャロビール

#9 山小屋事情
#10 Day3 高度順応日のゼブラロック・ハイキング
#11 月明かりの影ができる場所で
#12 Day4 いよいよキボハット(4,720m)へ
#13 ガイド&ポーターのこと
#14 Day5 登頂アタック5895mへ
#15 Day5 頂上からのハードな下山
#16 Day6 さらばキリマンジャロ
#17 アルーシャへ移動
#18 Day7 サファリ〜帰国へ
#19(最終回) 持ち物いろいろ

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