【キリマンジャロに登ってきた】#11 月明かりの影ができる場所で

ここで、高度順応で2日間、下山後1日と、通算3日間滞在したホロンボハットからの絶景をお届けして参りましょう。

朝日を受けるホロンボハットの山小屋
朝日を受けるホロンボハットの山小屋

言うても3720mですよ、奥さん。富士山に迫る高度なわけで、おのずと空気も違ってきます。気温は低く、朝夕は特に冷え、乾燥しています。しかし、そこまで登ってこないと見えない景色があります。私が登山にはまった理由は、この、日常では絶対に見ることのできない景色に感動したからです。

朝は空が眩しくて気分も高揚する
朝は空が眩しくて気分も高揚する

まず、到着直後は小雨がぱらつき、周囲がガスって白くなっていたのですが、夕方雨が上がったとたんに、虹が見えました。しかもその虹は、二重。地平線から二本の虹がすうと出て、眺めているうちにどんどん上に伸び、最後は完全な虹になりました。そんな様をずっと眺めているほど、山小屋ではすることがなく、これぞ贅沢と思ってしまう日本人。虹を見ると、何か良いことがありそうな気がするものです。

二重の虹ができ始めたところ
二重の虹ができ始めたところ

雨があがって青空も見えてきました
雨があがって青空も見えてきました
みるみる間に虹がつながった
みるみる間に虹がつながった

その後、どんどん明るくなっていき、眩しい夕日が空をオレンジ色に染めました。まだ空に広がる雲に太陽の光が映り、それは美しい夕刻となりました。太陽が近く、もったいないくらいに空の色が移り変わっていきます。

この空をずっと眺めていられる贅沢
この空をずっと眺めていられる贅沢

グラデーションが美しくて、ああ来てよかった
グラデーションが美しくて、ああ来てよかった

太陽が完全に沈んでも、少し雲が出ていました。ホロンボ1日目はそのまま就寝時刻を迎えたのですが、夜中に何度かトイレに行くために外に出てくると、なんと満天の星! ラメのブラシを何度も掃いたように、広い夜空に星がちりばめられています。もう感動! ダイアモックスの利尿作用もあり、空を見とれている余裕がないほどトイレに行きたくなるのですが、ちょうどトイレのあるあたりは灯りが少なく、自分のヘッドランプも消して、寒さに耐えられる限界まで夜空を見上げていました。

不思議なことに、自分の影ができるほど月が明るいんです! それなのに、ちゃんと星も見える。普通、明るいと星はあまり見えないものですが、灯りの総量が少ないことと、星があまりに多いことで、月と星の両方を楽しめるんじゃないかな。とにかく、トイレに行くたび星空鑑賞と月光浴の、一粒で二度美味しい時間を味わうことができました。

朝日をあびて光る遠くのテント群
朝日をあびて光る遠くのテント群

みんな起きてきて空を眺めています
みんな起きてきて空を眺めています

夜が明けてくる頃、我々が目指す先に、白い雪をかぶった山が見えるではないですか! キリマンジャロ山頂です!
夕暮れ時をちょうど逆回ししたように、薄暗い中に太陽が顔を出し、だんだん明度を上げていって、暖色から寒色へと風景を変えていきます。

遠くに見える雪をかぶった山頂と、月
遠くに見える雪をかぶった山頂と、月

太陽がどんどん大きくなっていきます
太陽がどんどん大きくなっていきます
どんどん、どんどん
どんどん、どんどん
太陽がのぼりきると、青い世界に
太陽がのぼりきると、青い世界に

夜空の月は煌々と照っていましたが、朝になっても月は色を薄めながら空にかかっていて、これがほぼ一日中空にそのままありました。キリマンジャロでは常に、月と太陽を同時に見ていた気がします。なんとう贅沢。

オレンジからブルーへ
オレンジからブルーへ

こんな天体のダイナミックなショーはやはり圧倒的。最近は、季節によらず工夫をこらしたイルミネーションを目にすることも多いですが、正直勝てない、ていうか負け! 勝負になってない! (そもそも勝負なんてしていないと思うけど) 夜空の星を写真に納める技術は残念なことにないけれど、目に脳に焼き付けておこうと、外に行くたびに首が痛くなるほど空を見続けたホロンボハットの日々でした。

#12 Day4 いよいよキボハット(4,720m)へ
#13 ガイド&ポーターのこと
#14 Day5 登頂アタック5895mへ
#15 Day5 頂上からのハードな下山
#16 Day6 さらばキリマンジャロ
#17 アルーシャへ移動
#18 Day7 サファリ〜帰国へ
#19(最終回) 持ち物いろいろ