【アグン山に登ってきた】#2 ウブド市場からライステラスへ

バリ島二日目。朝ご飯は宿の食堂で。食堂といっても、壁のないオープンエアで、まだぐずついている空や周囲の緑を眺めながらの開放感あふれる場所です。テーブルにはお茶のポットがあり、座っているとフルーツと、パンケーキや卵焼きなど一皿の控えめなお料理を作ってもらえます。私にはこれで十分でしたが、同じ時期に滞在していた中国人の家族連れは、持参したカップラーメンにお湯を入れてもらったり、食パンを買って来て一緒に食べたりしていました。

朝のお茶。おなかにやさしい。
朝のお茶。おなかにやさしい。

緑のカーテンを眺めながら
緑のカーテンを眺めながら
この日の朝食。緑色のがパンケーキ(!)、その上にバナナとココナッツとシロップが! 芸術!!
この日の朝食。緑色のがパンケーキ(!)、その上にバナナとココナッツとシロップが! 芸術!!

宿のオーナーはお年を召した画家のご夫婦ですが、その息子が経営を仕切っています。インドネシア語の勉強もかねた滞在なので、積極的に彼と会話をして過ごしました。私がアグン山に登ると言ったら驚いて、僕も登ったことがないよ、高校生のときにバトゥール山に登ったくらいだよ、と驚かれました。万が一私が遭難したりしたら、一番最初に気づいてもらわねばならないので、登山後に帰って来なかったらあとはよろしく頼むと言ったら、ゲラゲラ笑われました。

お部屋の前にいるやさしい顔のお方
お部屋の前にいるやさしい顔のお方

ホームステイでは、本当にバリ人のお宅の敷地内に泊まります
ホームステイでは、本当にバリ人のお宅の敷地内に泊まります
雨季は終わっても花がたくさん咲いていた
雨季は終わっても花がたくさん咲いていた
バリのお供え物、チャナン。こんなふうにぞんざいに散らばるのが好き。
バリのお供え物、チャナン。こんなふうにぞんざいに散らばるのが好き。
ホームステイの敷地内に無造作にいるカップル。よく見るとお茶している
ホームステイの敷地内に無造作にいるカップル。よく見るとお茶している
ここにもチャナンがありました
ここにもチャナンがありました

まずは今日は、市場まで歩いて、それから、足慣らしに町外れのライステラスをトレッキングすることにしました。曇り空ですが、雨は上がっています。
宿を出て、まずはウブド市場へ。建物が新しくなったと聞いていたので、見学も兼ねて。確かにこぎれいになっていましたが、一階から地下に続く、ローカルの人たちが食品や雑貨を買いにくるエリアは元の雰囲気のままでした。お香や、お供え物、野菜、果物、魚も売っています。バリには、シルバークローブという、丁字の匂いがするメンソレータムみたいな万能薬があって、昔はそれを見つけて買って虫さされに塗っていましたが、この市場で久しぶりに目にしました。しかし! 眺めていたその瞬間に法外な値段を提示されたので、ほないらんわい、と退散しました。スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど、定価のお店が増えてきた昨今、こんなあからさまなふっかけがなんとなく懐かしくなりました。昔は何を買うにも駆け引きに忙しかったけど、あれでバリニーズとたくさん会話することができていました。今はそれが少なくなりちょっと寂しいです。

ここにくるとなんとなくホッとします
ここにくるとなんとなくホッとします

ここは昔から変わらない。場所も匂いも。ニセモノトケイがなくなったくらいかな
ここは昔から変わらない。場所も匂いも。ニセモノトケイがなくなったくらいかな
無造作に置かれる商品たち
無造作に置かれる商品たち
チャナンの群れ発見
チャナンの群れ発見

寂しいといえば、昔は道を歩けば前後左右から「トランスポート!」の声にからめとられる感じだったのに、今はあまり声がかかりません。しかしタクシー業が減ったわけではなく、スマホ片手に覗き見しながらの人が多くなって、顧客争奪に必死な人が少なくなった気がします。それに、タクシーだのトランスポートだの書いた紙を片手に持って、もう片方の手でスマホを見ている、なんて人も少なくなかった。店番の女の子も、道端にヒマそうに座っている男子も、みんなスマホをスクロールしている光景は、日本の電車内を彷彿とさせます。バリニーズから声をかけられなくなったのは、私が当時より若くなくなっただけではなく、声をかける人の総数が確実に減っていることもあるでしょう。これはどこの國でも同じことかもしれません。

市場の真ん中にはバリの神様が
市場の真ん中にはバリの神様が
バリの女性は働きものです
バリの女性は働きものです
いいなあ、買って帰りたいなぁ
いいなあ、買って帰りたいなぁ
ここは雑貨エリア。シルバークローブは購入できず・・・
ここは雑貨エリア。シルバークローブは購入できず・・・
ちょっとの場所さえあれば商売できる
ちょっとの場所さえあれば商売できる
こんなお土産用のお面も売っています
こんなお土産用のお面も売っています

市場を出てから、チャンプアン橋方面に歩いていると、横っちょに、ライステラスに抜ける細い道が見つかりました。民家と民家の間の細い道や階段を通り、ずんずん歩いていくと、突然、ライステラスが目前に開けます。

王宮の前にいるのは、おじいちゃんと孫だろうか
王宮の前にいるのは、おじいちゃんと孫だろうか
ツーリストインフォメーションの看板を通り越して、ライステラスに抜ける道を探す
ツーリストインフォメーションの看板を通り越して、ライステラスに抜ける道を探す
王宮の前の雰囲気は昔から変わらない
王宮の前の雰囲気は昔から変わらない
チャナンの群れを通り過ぎて
チャナンの群れを通り過ぎて
立派な鶏を眺めながら
立派な鶏を眺めながら
あひるさんの群れも通り過ぎ
あひるさんの群れも通り過ぎ
やっとライステラスにたどり着きました
やっとライステラスにたどり着きました

ライステラスを歩いていると、色々なことを思い出しました。ちょうどこのライステラスを挟んで向こう側に、かつて私が働いていたオフィスがあったのです。友人と旅行をプロデュースする会社を立ち上げて、ここウブドで、ウブド出身の従業員たちと一緒にお仕事していました。色々な失敗やトラブルもたくさんあったけれど、バリ人のおうちに一緒に住まわせてもらったり、面白いこと、素敵なこと、嫌なこと、悲しいことがぎゅっと詰まった数年感でした。あの頃はまだ、ここでそういう仕事を作っていく人が少なくて、国自体がおっとりとしていたけれど、この経済成長とネットや通信の発達による世界の激変で、同じことは絶対にできません。今もそうだけど、バーチャンになったときに、このことを思い出してはウフフと懐かしく思うでしょう。使い古された言い回しだけれど、そういう事柄ってお金では買えないから、やっぱり一瞬一瞬を無駄なく生きていこうと前向きに思うわけです。

ウブドのヤシの木はとても元気
ウブドのヤシの木はとても元気

ゆっくりと一人でライステラスを歩く、バリに来て本当によかったなあと思うひとときです。

#3 足ならしのライステラストレッキングへ
#4 奇跡の雨上がり
#5 登頂達成から下山
#6 最終回 下山後は友人と

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