栃木県の那須にある茶臼岳(1915m)に登ってきました。
茶臼岳・・・なんとなく名前からして、茶色い山を想像していましたが、そのガラガラっとしたイメージはそのままに、びっくりするほど色とりどりの景色が見られる豊かな山でした。山頂部に噴火口があり、あらゆるところで蒸気や火山ガスが噴出している、なんというか生々しい山。頂上付近は岩がゴロゴロのガレ場で、地面に開いている穴に手を近づけると、暖かい蒸気を感じて指が湿ります。岩には焦げたような亀裂が多く見られるし、地球が生きていることを強く感じるところでした。
その山奥には、珍しいことに温泉があります。歩いて登った人だけが到達できる温泉です。1泊2日の山行でしたが、眺望と、秘境のような温泉、お天気にも恵まれて、夜は満天の星。下山時には雲に環水平アークと呼ばれる薄雲に虹がかかる現象も目にすることができ、非常な幸運でアゴがはずれそうになる反面、私のスマホとカメラがいっぺんに壊れました・・・いつの日にも幸運と不運は両天秤、という言葉をまざまざと思い出すひととき。いや、少しくらいの不幸がないと、安心して幸福を甘受できないのが我々日本人でありますから、ちょうどよかったかもしれません。しかしカメラ機能が両方使えなくなるとは・・・。
ロープウェイでショートカット登頂
早朝東京を出発し、茶臼岳の7合目に位置するロープウェイ駅へ到着したのは10時半。ええ、今回我々はロープウェイで一気に頂上付近まで登るという、一見、お嬢様登山でした。私もお嬢様のつもり満々で、今回はのんびりハイキングかしら、なんて高を括っていたのですが、そんなわけはないとこの数時間後および翌日に思い知らされることに。山奥までは登頂の後が長いので、ここはショートカットして正解でした。
ロープウェイは11時出発。なんと車内には車掌さんが同乗し、生声で見所をアナウンスしてくださるというアナログぶりが素敵です。乗車時間は10分もかからず、山頂駅へ到着しました。
そこから頂上までは1時間もかからなかったかと。意外と急坂、石がゴロゴロした道の後は、岩場を登っていきます。隣の朝日岳を眺めながら、なんとなく富士山を思い出させる道をゆっくり歩いていきます。
到着した頂上は、人、人、人で混雑していました。見ると、登山スタイルではない方も半分くらいはいる感じ。ここから噴火口のお鉢周りをして下山するだけなら、普通の靴でも大丈夫かと思います。ただ・・・茶臼岳は風が強いことで有名で、風がふくとロープウェイが止まってしまうそうです。ですので、往路はロープウェイで来られても、帰りは止まってしまう可能性も。そうすると、自力で下山となり、そこはやっぱり登山靴じゃないとキツいかと思います。ギリギリスニーカーでもいけるかもしれませんが、ハイヒールは無理でしょう・・・。登山ではなく茶臼岳に観光に行かれる方はお気をつけてくださりませね。ちなみに今回の故障第一弾、スマホは頂上付近でフリーズして壊れました(帰宅後には復活した不思議!)
山頂から峰の茶屋を経て樹林帯へ
さて、この日はなんとほぼ無風。そよいでも微風。ですので、帰路の心配をすることなく、頂上付近を普通の靴の人たちも歩いています。お鉢周りの道はまるで巡礼道のような雰囲気。お昼を食べて、山頂の神社で手を合わせてから、我々もその巡礼の道を歩きます。
なんというか、山の規模が脈々とおおらかで、ものすごい開放感があります。木がなく、石がごろころで、硫黄が地面を黄色に染めていたり、鉄分が多そうな赤茶けた土のところがあったりと、行ったことないけど火星に来ちゃったような。でも視界に入るすぐそこいらの緑の山の斜面は、まるでジュリーアンドリュースがサウンドオブミュージックを歌いながら駆けてきそうだったり。とにかく視界に「慣れ」が生じないんです。
しばらく岩ごろごろを歩くと、峰の茶屋にたどり着きます。ここは茶屋とはいえ実は避難小屋。ここからさらに歩くと、ちょっと危険な斜面歩きを経て、今度は樹林帯に入ります。ここからはやや蒸し暑くなってきますが、今度は様々な花を見つける楽しみがあります。オオカメノキ、マイヅルソウ、イワカガミ、ヤマツツジなどが、緑の中にピンクや白の美しい姿を見せてくれました。ちなみに茶臼岳の登山道には一切トイレがありませんので、文字どおり「お花摘み」とか、いろいろと覚悟も必要です。
山小屋のステキ露天風呂
アップ・ダウンの道を経て、いよいよ温泉付きの山小屋に到着です。露天風呂は基本的に混浴ですが、夕食前までの数時間は女性専用になるとのことで、到着するや否や露天風呂に向かいます。この風呂がですね、外の階段を登っていくと、あらあら艶かしい入浴中の女性たちが丸見えです。お風呂から立ち上がると、下を歩く人たちが見えるということは、あちらからも見えるということで。しかしこの露天風呂からの景色が素晴らしい! 遮るものがなく遠くの山が視界に広がり、雲の合間から太陽が射して、夕刻の空に神々しい光の風景が見られます。しかもひとっ風呂あびながらですのよ! お湯の温度もちょうどよく、よく手入れがされていて、歩記続けた足の疲れがみるみる取れていきます。景色の開放感が気持ちにも染みてくるよう。温泉街の温泉ではこうはいかないでしょう。
夜は21時で自家発電が切れ、消灯になるのですが、頭上にはびっくりするほどの満天の星が。こんなに見えることって、そうそうないんじゃないかと思います。いつまでもいつまでも眺めていたくなったけど、さすがに山間部の夜は冷え冷え。手足が冷え切らないうちに部屋に戻って布団に潜り込みます。朝早かったこともあり、早々に眠りにつきました。
二日目はさらに快晴! しかし・・・
翌日は前日よりもさらに快晴! 雲ひとつない完璧な青空が広がっています。朝食を食べてから出発は朝7時半。まずは昨日と同じ樹林帯をずんずん分け入っていきます。岩だらけのすごい急坂を下り、また登り、下り、登りを繰り返す。そして歩きに歩いたその先で、パッと景色が開けます。
ここは360度の素晴らしい眺望! 目の前には硫黄を含んだ蒸気がもくもくと吹き出している茶色い山、背後は深い緑の山脈。すばらしい風景でありながら・・・なんとこのタイミングでカメラのモニターが真っ暗になり、シャッターが下りなくなりました。ええ、故障第二弾はカメラです。この手持ちのデジタル製品がことごとく壊れていくという怪奇現象。硫黄ガスのせい? 単に私の扱いが荒いせい? スマホもカメラも使い始めて3〜4年くらい。これまでそんな故障が発生したことありません。なんと2台とも(しかもカメラ機能がついているもが!)使えなくなるなんて、なんだか不思議というか不気味です。キリマンジャロで使わなかった「写ルンです」を持ってくるんであったと少し後悔!
なのでここからは写真がありません。樹林帯を抜けてからはまた開放感が素晴らしく、地熱を身体で感じながら、地球の鼓動を聞いているような、なんともプリミティブな山歩き。ガスがもくもく出る付近を通りながら、ここらへんまでくると普段着+普通の靴の人たちも多く歩いています。しかし道は立派な登山道で、滑りやすく、ちょっと気を抜くと滑落の危険もあるような細い道を歩き、1日目に通った峰の茶屋へ。下山はロープウェイを使わず、ガラガラの道を歩いて下りました。写真がないのは残念ですが、その分景色を余計に見たような気がします。最後は長い階段で、やや段差が高く、キナバル山の下山を思い出しました。そして下山後、頭上には、環水平アークと呼ばれる、雲に水平の虹がかかる現象が。ついでに太陽の周りにもぐるっと虹が出ていて、なんだか不思議な様相でした。ちなみにこんなとき、私は「きっと良いことがある!」と思うのですが、「災難の前触れ」と思う方も多いですね。ポジティブシンキングですよ、ポジティブに!
なお、スマホは自宅に戻って「裏技の強制リセット」を実行したらあっさり復活。しかしカメラはどうにもこうにもならず、今週末から入院してきます。6月は月末にアルプス縦走が控えているので、それまで人間ドッグならぬカメラドッグのつもりで養生してもらうことにしましょう。思えば二つとも、私と一緒に山に旅に出かけているんですもんね、ちょっとお休みも必要だったってことでしょうかね!
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