【Bali】CANANG

canan

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4月のカレンダー画像は、バリ島のお供え物、チャナンで。

バリ島の女性たちが、朝、腰布を巻いて、お盆にチャナンをたくさん乗せて家のあらゆるところに供えていく姿がどれほど美しいか、ということを、バリ好きの友達とよく話したっけ。背筋をシャンとのばして、台所、門、部屋の入り口など、神々が鎮座する場所にチャナンを置き、空に円を描くように線香をまわして、祈りを捧げる。あの島のヒンズー教は善悪二元論だから、悪い神様にもちゃんとお供えをする。まだ太陽が低く、夜露の湿り気が感じられる時間帯、家庭でもお店でも、安宿でも高級ホテルでも、同じように女性たちがお供えをする姿が見られた。まだ爆弾テロ事件の起こっていないあの頃、バリ島に通っていた私たちは、それを眺めるのがとても好きだった。

特徴的なのが、一度供えたチャナンは、ぜんぜん大事にされないこと。そのまま風に飛ばされたり、中のご飯を狙った犬につぶされたり、はたまた通りがかりの人に踏まれたり、夕方頃になると道ばたには茶色いゴミと化したチャナンがそこら中に転がっている。お供えをして祈るその瞬間までがチャナンのお役目で、その後は蹴られるまま踏まれるまま、砂にまみれておしまい。でもまた翌朝になると、女性たちはお供えものを持って歩く、が日々の営み。

私がバリ島で仕事をしていた頃は、泊めていただいていたおうちでも、チャナンを手作りしていた。けれどその頃でも、市場で何個かをビニールに入れて売っていたし、だんだんバリの人たちも忙しくなっているので、いちいち手作りをする時間はなくなってしまったようす。思えばその頃は、まだ冷房のある店が珍しく、お店の子たちは入り口付近にぺたんと座ってぼんやり客待ちしていたり、夜は真っ暗になってしまって野良犬の恐怖におびえたりする時期だった。昨年訪れたときは、コンビニの蛍光灯が一晩中ついていたり、どの店もクーラーがガンガンかかって寒いくらいで、なんだか違う国にきたような気持ちになったです。

でも、やっぱり一歩奥に入ると、夕景の中でバリ特有のワイルドな椰子の木はわさわさと暴れていたし、ヒマそうなおじさんたちは健在だったし、バイクに乗ったお兄ちゃんたちもお祭りになると白いサパリでビシッとバリニーズスタイルを決め、ごはんを食べるときには数粒地面にいる悪霊に供えることを忘れたり忘れなかったりしてる。私たちバリ友達は、何年足を運ばない時期があっても、どんなに便利に進化して風情が薄れてしまったとしても、あの島がこの地球上に存在していること、そしてチャナンが毎日供えられていることで、なんとなく安心できる、そんな一生治らない乙女チックな病気にかかってしまっているのでした。