バリ島サヌールのビーチにて。2014年3月のカレンダー画像はこれを使いました。
この写真は、なんか自分でもすごーく気に入っているのだが、サヌールに行ったことのある人に皆「こんな場所あったっけ?」と尋ねられる。
もちろんこんなグリーンな海があるはずはなく、かなり加工している、ウソッコ写真なのであるが。
この写真、海の真ん中の沖のほうに棒っきれのようなものが立っているのが見えるが、これはペンジョールといって、バリヒンズーの宗教的なもの。海の中にペンジョールが立っている場所があるんだよ、と、その昔、私の周囲のバリ島フリークの間で静かな話題となった。その話を何度も何度もするほど、この場所を気に入っていた人がいた。非常にロマンチストであり、思いやり深く、ピュアであり、人気者であった。
その彼は数年前、病気で亡くなってしまった。
海のペンジョールの話は、彼から耳にタコができるほど聞かされていたが、実際にはちらっと見たことがあるくらいだった。しかし、彼の話が記憶を浸食したようで、私の中で、現実なのかどうかわからない「海の中のペンジョール」が膨らんでしまっていた。そのイメージがこれ。
彼亡き後、またもやサヌールビーチに滞在した私は、ヒマにまかせて毎日、朝夕海岸を散歩した。海の中のペンジョールは健在だったが、本物のは、膨らんだ記憶よりもずっと遠く、小さく、しょんぼりした感じだった。まあでも、記憶なんて美化されていくものなんだし、この写真が私にとっての本物って思っている。