無事に羽田を発った私たちは、機内で寝たり食べたり喋ったり映画観たり本読んだりと、やることには事欠かずに過ごしました。しかし心配事がひとつ。ドーハでのトランジットです。
トランジットの時間は1時間45分。飛行機が遅れさえしなければ、待ち時間もなく、ちょうど良い時間です。しかし、前情報によると、ドーハ空港はとてつもなく広いとか。そして中東ということであれば、それなりに警備も厳しかろうです。荷物を検査されたり何やらで、もしかしてここで最初のトラップにかかるのではないかという心配がありました。
ちなみに、カタール航空では、トランジットの時間が短い人とそうでない人のチケット袋の色が違います。時間が短い人はオレンジ色。私たちの袋は黄色。決して、アラートがあがるほど短いわけではないようです。が、油断は禁物。目的地に着く前にいらん苦労はしたくないものですので、できるだけ早く飛行機を降りようと、前のほうのシートを指定したり、できる予防はしていました。
ドーハが近づいてくると、窓から地上が見えます。砂漠らしきもの、埋め立てられたリゾートらしきもの。そうしているうちに、隣に座っている男性となんとなく話すようになりました。男性は、ギリシャ人。エジプト生まれ。造船業の作業員として、日本の広島で働いていたそうです。シーズン毎にあちこちの国でお仕事をされているようで、今回はドーハ経由での帰国とのこと。そして彼のトランジット時間は20分ですと! それは普通に考えても無理な気がしますが、彼はお気楽そのもの。このあたりにラテンとそうでない気質の差が表れます。
なぜポーランドに行くんだい? と聞かれたので、我々は歴女なもので、と答えたところ、親しみを持ってもらえたようで、Facebookで繋がろうとお互いのユーザ名をおしえあったりしました。一昔前なら、ハガキを送るための住所、近年はメアド、そして最近はFacebookが主流ですね。自分の旅行歴をふりかえって、便利な世の中になったことを実感するひとときです。
飛行機の高度が下がってくると、ドーハの高級ホテルが林立しているのが見えてきます。さすがオイルマネー。とつぶやくと、その彼が言います。
「そう、オイルマネーだね。でも知ってる? ギリシャもオイルマネーに溢れているのさ」
「ええっ、ギリシャって経済ヤバかったんじゃなかったっけ」
「いーや、オイルマネーでばっちりさ。ただしオイルはオイルでもオリーブオイルだけどな、ドワハハハハハハ」
・・・ギリシャジョークかよ。さすがオリンポスの神々が居た国のジョークは一味違います。
そして離陸の時。ギリシャジョークの彼は、シートベルト着用サインが消えるなんて関係なく、荷物を降ろしてズンズン前に進んでいきました。そして後日、無事Facebookで繋がった我々は、後日談を聞いたところ、やっぱり乗り遅れたそうです。そしてその足でカタール航空にクレームを入れ、ラウンジが使い放題だったぜ! とのこと。まあそのあと滞りなく家に帰ったようなので、万事オーライでしょう。
そして他人事ではなく、私たちも乗り遅れるわけにはいきません。まず定刻どおりに到着したことでスタートはクリア。国際空港はだいたい世界共通で、案内がわかりやすくなっているものですから、案内板どおりに進んでいけば道に迷うことはありません。途中、アラビア文字の表示が珍しくて写真を撮る余裕すらありました。荷物検査の列もスムーズに動き、案内板でトランジットゲートを確認。自分で見つけなくても、モタモタしている人用にちゃんと案内人が教えてくれます。
ゲート番号がわかったところで、ちょっとお店でも見ちゃおうかしら、なんて心が生まれますが、まずはゲートを確認してからと思って、ずんずん歩きます。ずんずん、ずんずん・・・・・やばい、やっぱりちっとも着かない。歩けど歩けど、スケールが大きすぎて、ちっとも到着しないじゃないのーーーー。出来心から寄り道なんてしなくて本当によかった。結局ゲートに着いたのは、ゲートオープンの10分前を切っていました。こえええ。
ドーハ空港では、無料でWifi接続ができたので、まずは到着の無事を知らせます。ポーランドを含め、このあと立ち寄る公共施設はほとんどWifiが無料で使えて本当に便利でした。トイレをすませると、ゲートに列ができています。どうやら、搭乗口まではバスで向かう方式のよう。私たちも列に並ぶと、ゲートのモニターに「ワルシャワ 気温-3度」という表示が・・・。うそお。寒い寒いとは聞いていたけど、10月後半でマイナスですか。これはちょっと油断してきちゃったかもしれないなー。旅行中は荷物を減らしたいがために着たきりスズメを決め込む私ですが、今回は持ってきた服を全部毎日着る、いつもよりさらなる着たきりスズメになりそうです。
ゲートのお兄さんに「Japan? こにちわー」と愛想よく挨拶してもらったのに気をよくし、外に出ると、あっつ・・・そう、ここは砂漠の街だったのでした。トヨタ車が並ぶ滑走路周辺をバスは走り、搭乗口へと向かいます。タラップを上がって飛行機に乗り込むと、フランス人形のような客室乗務員さんたちが笑顔で迎えてくれました。周囲にはもう、平たい顔族はほぼいません。それもそのはず、ポーランドは私たち到着後すぐにサマータイムが終わり、夕方4時には暗くなる季節。旅行シーズンはすでに終わっています。だから航空券も格安だったわけです。
ワルシャワ行きの飛行機の中では、ポーランド語の練習に余念がありません。やっぱり、最低限、挨拶やお礼は訪れたその国の言葉で言わなくちゃね! でも、発音が、私たちのものとはまるで違うので、結構覚えにくいものです。しかし私たちは、イイクニ作ろう鎌倉幕府の国の人。語呂合わせで必死に復唱です。
こんにちは・・ジェン・ドブリィ (ジェーン! ドブに気をつけて)
ありがとう・・・ジェンクイエン (ジェーン! 食う言えん)
さようなら・・・ドヴィゼニア (ドブに銭! あ!)
ごめんなさい・・・プシェ・プラッシャム (プシェ(缶ジュースを開けた) プラッシャム(炭酸がプシューと溢れたイメージ))
ジェーンて誰とかドブが多いとか、最後のは語呂合わせでもなんでもないとか、色々つっこみどころはありますが、ようは覚えれば良いのです。裏を返せば、この4語を覚えるのにこんなに苦労するとは、自分の言語センスのなさに驚愕です。
窓の外は、中東諸国の山岳地帯でしょうか。見たことのない地面が広がっていて、日本から遠く離れたことを実感します。おりしも、この時期はウクライナ上空で飛行機の墜落事故があった後。カタール航空のホームページでは、ウクライナ上空は航路から避けますという宣言文が掲載されていました。
普段、ニュースで見るだけのことが、自分の身を近くに置くことにより、実感値が変わってきます。何にせよ、ネットやテレビだけでものごとを知っても、それで十分ではないということは、いつも心に留めておきたい事実であります。
そしていよいよ、ワルシャワ到着です。覚えたからバンバン使うよ、ポーランド語(の挨拶のみ)。