【オーストラリアに行ってきた】#6 コジオスコ登山・・できるかな 2

そんなわけで、リフトで上がりましたが、上りリフトはガラガラ。貸切状態です。
上から降りてくる人はいました。でも、その方たちは、登山の格好をしていない、観光客、それも皆、かなりお年を召した方々のグループ。山に登る気満々の服装ですれ違う私を、物珍しそうに見つめながら手をふってきます。私も、苦笑いしながら手を振り返しました。

これが唯一動いていたリフト
ほとんどがクローズです。
リフトは16時までと書いてあります。
遠くに見えるのは、確かに雪・・・

リフトの途中地点からちらほら雪があり、終点では、それはそれはもう、雪山です。リフトの係の人も、私を下すとそそくさと小屋に戻ってしまいます。寒いしな。そして終点には、人っこひとりいない様子。さ、さみしい・・・。

リフト到着地点。雪・・・

まずは元気を出すために、飛行機でもらった機内食のシリアルバーをむしゃむしゃと食べます。行くべきところが右なのか、左なのかもわからず、しばらくそのへんをウロウロしてみます。

天気はいいんだけどねえ。
道の右側を見るとどれだけ積もっているのかがよくわかる(泣)

すると、やっぱり登山スタイルではない老夫婦が一組、向こう側からやってきました。私がそのへんをパシャパシャ撮影しているのを見て、旦那さんのほうが近寄ってきます。

「わしのカメラと同じや!」

見ると、お父さんの手に私と同じSONYのコンデジがあるではないですか!
このカメラはいいよねー、なんたってファインダーがついているから、液晶が反射するときに便利だよねー、暗いところでもよく映るしねー、SONY最高だよねー。うんうん、とお互いに同じカメラを自慢し合います。こんなところでSONY M3仲間に出会えるとは思ってもみませんでした。心細い気持ちが、数センチほどあがった気がしました。

カメラ仲間のお父さんに撮影してもらった
そしてそのまま行ってしまった・・・

そして散策を進めると、さらに上の方に通じる道がありますので、進んでみます。しかし、日陰は大量に雪が積もっていて、アイゼンもスノーシューもない私の登山靴では、とにかくツルツル滑る滑る・・・これでは到底上まで行くのは無理そうです。無念・・。

これだもの。滑るに決まっている

さらに上にある、運休中のリフトの降り口まで来ると、視界が大きく開けてきました。そして足元を見ると、まさにこれが登山道。事前情報で得ていた「アイアンメッシュで舗装された道」が、雪の合間から顔を覗かせています。

運転していないリフトの降り口。誰もいません。
進んでいくとこんな感じに
空の青さが目にしみるけど、これは確実に雪山・・・
これこれ。このアイアンメッシュの歩きやすい道と聞いていたのに(涙)

でもねー。少しでも道を外れると、ズボッと足をとられるわけです。ここは足跡でメッュが見えているけど、この先はどうなっているかわかりません。ああスノーシューが欲しい・・・行く手に、まさにスノーシューを履いている男女がいました。私も持ってくるんだったわ・・そう呟く私を、彼らは気の毒そうに何度も頷きます。あーあー。

河の上の橋は雪がなかった。
雪解けの水が大量に流れているのに・・・

でもいけるところまで行ってみよう。とりあえず雲ひとつない青空で、天気予報は晴れだった。だだっ広く広がる大地には、目印もろくになくて、これで天候が悪化したらホワイトアウトで遭難確実だけど、風もなく、まさに悪い予感のかけらもないさ((c)キヨシロー)。私のほかにも悪い子がいるようで、アイアンメッシュロードの上に積もった雪には、たくさんの足跡があるから、なんとか踏み外さずに進めるところまで。このまま足跡が続くところまで行ってみようではないか。

そしてコジオスコウォークの開始地点。
ところどころでアイアンメッシュの道が見えている。これさえ続けば・・・
すぐにこの有様(涙)
あーあー。。。

そう思って進み始めたら、前からまた男女カップルから歩いてきました。目を凝らしてみると、彼らはやけに軽装で、足元なんかスニーカー履きです。声をかけて聞いてみると、なんと頂上まで行ってきたと!

まじで? その靴で? どうやって?

「雪の上に残されている足跡の上からはずれさえしなければ、この靴でも歩けるよ。滑るのさえ注意すれば。今日は天気も良いし、頂上も行けたよ、まあここから2時間以内かな」と!

行ったのね?
私よりもずっと滑りやすいその靴で、登ったのね?!

登山の常識として、本当は、こういうとき、他人の言動につられてはいけないのだけど、この時ばかりはこの二人の経験を踏襲してみることにかけることにしました。大丈夫かオレ?!

とはいえ晴天の下、大自然の絶景が。
このへんで、もうなるようになれと思い始めていた。

道はずっとゆるやかな登りで、16時でリフトが終わることが気になっていたのか、無意識だったけれどよくよく考えてみると水を飲む以外は休憩をせずに歩いていました。不思議と疲労は感じなかった。なぜならとにかく真っ青な空、光を反射する雪が美しくて。日焼け止めを塗ってはいたものの、オーストラリアの紫外線は日本の5倍とのこと。かなりの量を浴びていたはず。

ところどころ道は見えたりもします
でもすぐにこれよ(涙)

でもこのときは、もうそんなことは頭から消えて、ただ白い大地を進むことしか頭にありませんでした。これが後々の顔面トラブルにつながるのですが、そんなことは頭から消えてしまいました。雪の上を滑らないように注意しながら歩くというのは、いくら登りがゆるやかでもかなり体力を消耗します。加えて直射日光浴びまくりで体力はじわじわと奪われる。でも、遠くの上方に水色の氷河が見えたり、白い大地の様相も山に分け入っていくにつれ、その360度独り占めがだんだん快感になってきたり。あのへんが頂上か、と思って目指していたところは単なる通過点でしかないのもお約束、いつまでたっても頂上は見えません。

白と青だけの世界、視界に誰もいない。

途中、展望台で、マダムがひとり、景色を眺めていたので声をかけてみると、彼女の家族たちは頂上に向かっていったけれど、自分は無理そうなのでここで待っているのだそう。彼女が指をさしたその先に、家族たちが、最後の急坂を下ってきている姿が見えました。彼らはガイドつきで、ストックやスノーシュー完備、頂上から戻ってきた様子です。でも、行けないほど遠いわけじゃない。これはもう、私も行くしかない。マダムに別れをつけ、再び白い大地を歩き出します。

このあたりから氷河が見え始めます。水色の線が見えますか?
行く手に人が! 人類が見えるとほっとする・・・。
風紋が描かれた雪の上をラッセルラッセル

そして数十分後、私も頂上に続く急坂まで到着しました。後で聞いたところによると、ここは本来、階段道なのだそうだが、そんなもの雪に埋まってしまい、しかもかなりフカフカの雪に覆われてしまっているので、ラッセルするしかありません。膝の少し下まで足が埋まる状況で、ヒーハーヒーハー言いながら登ります。私、こんなにハードな雪山やったことあったっけ? いやない!!

進んでも進んでも着かない。。

足を交互に出すのもかなりのパワーを要し、正直途中で何度もくじけそうに。上から降りてきた別のグループも、スノーシュー&ストック完備でした。すれ違うときに、「・・・あとどのくらい・・30分・・・?」と聞くと、そのグループのガイドらしき女性が「そんなわけないわよ! 10分よ10分、もう少しよ!」と励ましてくれました。涙出そうになりながら、ズボズボと埋まる足を一歩一歩前に出して進みます。登り切ってもまだ、頂上は見えず、さらにゆるやかな坂を登り、進んだところに・・・・見えました! 頂上が!!

何かが見えてきた・・・!
やりましたーー頂上!!!

頂上には、シンガポール人の家族連れがいて、ランチを食べていました。近づいてくる私の姿を見つけると、母親らしき女性が手をふってくれました。そして、到達!
頂上の記念碑に手をついて

「ついたーーーやっとついたーーーーあーーーーー死ぬかと思ったーーー」

とわめく私に、「大丈夫!? あなたひとりなの?? 食べものある???」とひどく心配してくれました。あ、大丈夫、ランチあるある、とヘラヘラする私に、彼女は息子に命じて「とにかく写真よ!」と撮影を促してくれました。ううう、ありがとうございます。苦労の末、天使に会った気分です・・・。

頂上ではまず、冷え切ったサンドイッチを食べました。食べ始めると、どれだけおなかがすいていたかがわかります。そりゃ、行動食も一口も食べずに登ってきたのですから。幸いなことに頂上も無風だったので、「南極からの風」を感じることができなかったのはちょっと残念。でも風があったら、登ってこれなかったかもですね。シンガポール人の家族は、16時でリフトが終わることを念押しして、下っていきました。お父さんは「さよなら〜」なんてちょっと日本語で話しかけてくれましたよ。

シンガポールのご家族と。頂上で仲間に出会えて本当にほっとしました。
冷え切ったサンドイッチも格別な美味しさ。

ランチを終え、ひとりになったところでBrett氏に電話します。「ひー、登ってきちゃったよー」と語ると、彼も驚きつつ、喜んでくれまた。下りの見込み時間を伝えると、その時間に迎えにきてくれるとのこと。名残惜しいけれど、そんなに余裕はないので、降りる準備をします。

頂上の向こう側も険しい雪山
名残惜しい景色を瞼に焼き付ける。

下りはもう、距離も道もわかっているので気分が随分ラクです。急坂を下ったところで、いつの間にか追い抜いてしまったスノーシューのカップルに再会しました。私もあの、元気づけてくれたガイドさんを見習って、「あと10分くらいだよー」というと、彼らの顔がパッと晴れました。そうよね、スノーシュー履いていてもちょっと今日はつらいよね・・。

きた道をどんどん下っていく。
また風景を独り占め。なんという贅沢。
氷河もじっくり撮影する余裕が。
メッシュの道が大分見えてきました。
景色の看板が所々にあるのだが、雪なのでまったく違う様相。
再び深い雪のゾーンへ
スレドボまでの距離も書いてある
奇岩の山もまるでサーティーワンのロッキーロード
振り返る。こんな道を歩いてきたんやー。
何者かの足跡も発見(下りは余裕があるので見つけられる・・・)
大分、雪が薄くなってきました
ああ太陽が近い。無事だったから言えるけど、雪のコジオスコは本当に美しかった。
お気づきかもしれませんが、この紫外線で、この後、私の顔は大変なことになりました

リフトの時間にも無事間に合い、リフトの係りのお姉さんに「登頂したった・・・」と伝えると、驚きながらも喜んでくれました。インフォメーションのおねえさんには怒られそうなので、黙っていることにします・・・。

リフトにも無事間に合いました
レンタル屋さん。スノーシューを借りていくんだった。。

下山後、持っていたみかんを食べながら、友人に、登頂成功のメッセージを送りました。そしてリアルタイムに日本からお祝いのコメントわもらいました。ひとり旅・ひとり登山ですから、安全報告も兼ねているのですが、おめでとーと言われるにはやはり嬉しいものです。SIMを買っておいてよかった〜。

山の麓はすっかり春なのに。。。
持ってきたみかんを鬼食い。

そして、帰り道はもうひとつサプライズが。カンガルーが見られるといいなーという私のリクエストにこたえて、Brett氏が、野生のカンガルーのコロニーに連れていってくれました。いやあ。目の前でごはんを食べて、袋から赤ちゃんが出入りしていて、そんな風景が数メートルの距離で見られるなんて。交通手段の確保には苦労したけど、こんな親切なBrett氏と出会えたのだから、やってよかった来てよかったと思いました。やっぱり旅は、インターネットやテレビ番組では味わえない経験が待っているものなのですよ〜。みんな、旅に、出よう!

カンガルーのコロニー!
カンガルーを激写するわたくし。