7月23日、日本はポケモンとフジロックで盛り上がっていましたが、わたくしの週末は富士山登頂という、ベーシックかつ個人的悲願達成の日でございました。今回は、三度目のチャレンジで、ようやっと初登頂。1、2回目は、両方とも暴風雨雨で登頂ならずだったのです。よって、私にとっては実質、富士山頂とはキリマンジャロよりも遠い場所に感じられました。だからもう、静かに大盛り上がりです。
だって、それまで、私にとっての富士山は、「夕食はカレー」「真夜中からの暴風雨が最大のアドベンチャー」「登頂って何ですか」の約3本だったのです。登頂話を聞けば指をくわえて羨ましがり、「ここ富士山の山頂にちょっと似てるよねー」と言われれば「行ってないので知りません」と悪態をつき。それがやっと登頂したらば、「ええー! 富士山の頂上ってこんなだったの〜?!」「ひえー、下山の景色、想像をはるかに超える!」という悲鳴の連発。百聞は一見にしかずとはまさにこのことと実感いたしました。絶大な人気を誇る国民的スターの魅力のひみつに触れたような二日感でした。
■富士宮口五合目
朝8時、新宿を出発し、一路、静岡県側の富士山登り口「富士宮」を目指します。フジロックに向かう人が多いせいか、若干渋滞気味。しかし心配していたお天気も、理想どおり、暑すぎるわけでもない薄曇り。全部が快晴だと景色が良く見えるのですが、反面夏の登山では気温が上がりすぎるので困ります。メインではないところはやや曇っていたほうが涼しく、快適だったりします。
富士宮口に到着したのが11時過ぎ。まずはトイレに行ったり、荷物や靴を整えます。周囲は霧に覆われて、もやっとしていました。が、あれ・・・雨が(涙)。急いで雨具を身につけます。昨年はここで土砂降りだったのですが、そんなことは思い出さないように。霧粒がちょっと大きくなっただけさと言い聞かせます。ちなみに今回のチームには、私のような3回目のリベンジだけではなく、4回目のリベンジというツワモノもいらっしゃいます。恨み節が再び三たびの雨を呼んできそうなチームですから、ネガティブな要素にはやや過敏になるのも仕方なし。しかし、これだけ悪天候を経験してきましたからこそ、逆に腹も座っています。とにかく今回もまた、雨具を着ての出発となりました。
■六合目
30分ほど歩いて六合目へ。ここからしばらくトイレがないので済ませておきます。ちなみに富士山のトイレはほとんどが有料で、六合目のトイレに至っては、お金を入れないと個室のドアが開きません。料金は200円。ここから登ると、さらに300円へと値上がりしていきます。富士山へ行くと決まったら、まずは大量に百円玉の準備が必要です。
3回目にもなると、しくみにも詳しくなり、コイン投入口に迷っているグループの人に教えてあげちゃったりする始末。「詳しいですね」と褒められても「ええ、3回目ですから・・・」とやや暗く答えるしかありません。
■宝永山へ
トイレを済ませ、水分補給をしたら、出発です。ここから、富士宮ルートを抜けて、宝永山のほうに向かう「プリンスルート」を通ります。
この「プリンスルート」ですが、富士山に数あるルートの中でも新しいもので、平成20年に、皇太子さまが通られたため、この名前がついたようですが、「プリンスルート」という固有のルートがあるわけではなく、富士宮ルートと御殿場ルートをまたがる経路を指して言います。富士宮・御殿場の2ルートの美味しいとこどりをしたかのような、ルートとしての面白さはもちろんですが、人が少ないのも魅力のひとつ。富士山といえば、渋滞するんでしょ? とよく聞かれますが、渋滞するのは主に山梨の富士吉田口から登るほうのこと。あちらは公共交通機関でも行きやすく、神社やお店も充実して観光地としても賑わいがあるため、たくさんの人が訪れます。反対にこの富士宮口は、車やバスチャーターでないとちょっと不便のなので、富士吉田ほど賑わっていないのだそう(「そう」というのは、私が富士吉田に行ったことがないので又聞きだから)。そしてこのプリンスルートも、いわゆる道に名前がつけられたルートではないからか、案内図のルートから漏れていることも多いようで、人は少なめでした。
宝永山は、宝永4年(1707年)、宝永大噴火でできた山だそう。富士山を富士宮側から見ると、右側にこんもりちょこっとひっかかりがあるように見えますが、そこがまさに宝永山。ブラタモリでタモリさんが訪れていたので知っている人も多いかと。ここは噴火しただけあって、大きなクレーターが口を開けていて、迫力満点です。このあたりからようやっと雨が止み始め、空と周囲の景色が見えてきました。ナイスタイミング! 今年は持ってる気がしてきます(いや、調子に乗ってはいけないと言い聞かせつつ)。ここからは火山らしく、岩場と砂利道が続きますが、景色が見えていると見えていないのとでは気分も大違い。昨年は足元がすべるし埋まるし進めないしと、大変残念なポイントだったのですが、今年は足取り軽く登り切ります。
宝永山から「馬の背」と呼ばれるところに出ます。その名のとおり、吹きっさらしの稜線歩きですが一昨年、下山のときに暴風雨の中ここを通り飛ばされそうになりました・・・ああ負の記憶が多すぎる。反面、本日の幸せを噛み締める。雨が降っていない、景色が見える、それだけでハッピーでございます。それと、わたくしこの日、非常にコンデションがよかったんです。前回の南アルプス縦走で、足がちょっとつり気味になったり、疲労が激しかったので、この富士山に向けてはストレッチや筋トレを毎朝少しずつだけど続けていたのです。それが功を奏したのか、足取りがとっても軽い! やはり日々の努力の蓄積って侮れません。
■七合目
馬の背を抜けてから、七合目まではアップダウンの繰り返しですが、基本的に富士山はそんなに傾斜が激しくないので、歩くのが本当にらくちんです。写真をとったり、友達とお喋りしながら、余裕の登山。そして7合四勺にある「わらじ館」で最後の休憩。ここでまたトイレに行くのですが(トイレの話が多くてスミマセン)、トイレは個室が2つだけで、すごい行列でした。そのため時間がかかってしまい、並んでいるうちに息を吐くとすでに白い息。標高は3000mを超えているので、気温も低くなってきています。トイレ待ちの間にも身体が冷えてしまい大変でした。そしてなによりも乾燥が激しい。顔もパリパリ、喉が変な渇き方をします。
そしてトイレを済ますと、一目散にわらじ館に向かい、、「強力餅(200円)」を購入。昨年食べて美味しかったのでリピートです。くるみの入った、ゆべしっぽいお餅です。しかしここで、私によくありがちな現象なのですが、一度目美味しかったものをリピートすると、一度目ほとの感動がなくて疑問・・・今回もそうでした。想像が味への感動を大きく上乗せしてしまうのだと思います。まあ普通に美味しかったんですけどね。期待ほどではなかったのがやや残念。さて、ここで上着を一枚着こんて、一路、七合九勺の赤岩8合館を目指します。
途中、見事な雲海の上に、富士山の影がうつっていました。いわゆる「影富士」ってものですね。これ、キリマンジャロでも同じ現象を見たのてすが、現象の構造は理解できるものの、正直壮大すぎてちょっと感動が薄かったです(あれ、今回こんなテンションの感想が多いな)。
キリマンジャロでも、同行のパーティのメンバーの一人が「影富士だってめったに見られないのに影キリマンジャロだよ!」と興奮気味に教えてくれたのですが、私の感動の薄さにややがっかりされたかと思います。そして今回の影富士も、たぶんめったに見られないありがたいものなのでしょうが、これも自然すぎてあまり高揚せず・・・テンションが低くてすみません。綺麗は綺麗だったのですが!
■山小屋到着
夕方5時近く、赤岩8合館に到着。まずは寝床を割り当てられるのですが、一昨年は小屋の真ん中あたりの二段ベッドの1階に押し込められて、小屋を閉め切った夜間に酸欠になりかけました。昨年も同様に二段ベッドの1階でしたが、一昨年よりはすこし窓や入り口に近い場所だったためか(それともキリマンジャロに向けて高山病帽子の訓練に入っていたからか)、酸欠の症状は出ませんでした。ただ、夜の眠りは浅く、何度もトイレに行きました。
そして今年。小屋のお兄さんが案内してくれたのは、二段ベッドのさらに上の3階。ここは蚕棚のように狭く、窓や入り口からも遠いので、酸欠間違いなしのように見えました。そこでお兄さんに「できれは一階にしてほしい」と相談してみます。最初は渋っていたお兄さんも、私たちのチームにちょっと具合の悪そうなメンバーがいたことから、まとめて一階の、それもベッドではない窓に近いスペースを提供してくれたました。これが本当に効果的だった! 隙間風がほどよく入るので酸欠にもならず、ベッドではないので足も少し伸ばせたし、そしてこれはシーズン始まって間も無いからかもしれないけれど、布団がじゃりじゃりしない! そう、富士山の山小屋のベッドの布団は、乾燥したところから登ってきた人がそのままの服で寝るため、非常にじゃりじゃりなのです。ですので、この日は、過去2回の富士さと異なり、とっても快適な寝床が確保されました。
寝床が決まったら、防寒対策をして、まずは夕食を。ここのカレーは美味しいんですが、高所で食べすぎると夜中に気持ち悪くなってしまうため、八分目で我慢です。天気がよかったので、雲海と影富士を眺めながら、お外で食べることにしました。ちなみに昨年も、夕食時だけは晴れていたので、外でカレーを食べました。絶景を眺めながらのカレーはとても美味しかったのですが、なんと食べている間にみるみるカレーもごはんも冷めていく・・・・最後は悲しい冷たいカレーを口に運びました。絶景の代償です(泣)。そのあと、何杯も暖かいお茶をらもってお腹を温めました。
カレー後は暗くなるまで景色を眺めたり、トイレに行ったりしながらゆっくり過ごします。外国人率が高く、私たちのチームにもスウェーデンの方がいたし、レンジャーみたいな格好の人がいるので聞いてみたら、日本で働いているザンビアの方でした。そのほかにも続々外国の方が少人数で現れ、小屋の方も英語で対応です。山小屋ではやることがないので、ヒマな私たちは明日の準備を終えたら早々にお布団に。消灯は9時だったのですが、いつ電気を消されたのかわからないほど熟睡できました。1階の寝床を確保してくれた小屋のお兄さんありがとう!
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