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【キリマンジャロに登ってきた】#14 Day5 登頂アタック5895mへ

さて、いよいよ登山のクライマックス、登頂アタックの時がやって来ました!!

ウフルピーク(5895m)の山頂標

ウフルピーク(5895m)の山頂標

※登頂アタックの深夜だったため、夜明けまでは写真がありません。後半に素晴らしい風景をたくさん載せてあります!

まずは夕食まで、キボハットで準備をします。隊長のアドバイスは以下の3点。
・アタック時は非常に寒く、高度もかなり上がるので、防寒はしっかりと。しかし帰路太陽が登ると暑くなってくるので、着脱可能な着方がベスト。
・登山に用いる着圧タイツは止めたほうが良い。血液の循環が悪くなり体温が上がりにくくなるからとか。
・荷物はできるだけ少なく。リュックもできれば持たないほうが良い。ポケットやサブバッグを使うのがおすすめ。またはプライベートポータを雇うべし。

まず1つ目は想定範囲内でした。インナーダウンが薄かったので、いらないかもなーと思いつつも、予備で持って来たダウンベストが活躍しました。また、出発前に先達から教わったとおり、首の後ろや背中とおなか、太ももなど合計7箇所にホッカイロを貼りました。
キリマンジャロ

しかし2つ目はちょっと失敗。普段の登山では、着圧タイツが結構温かいので防寒にもなっていたのですが、たしかに締め付けるのは良くなさそう。しかし荷物を少なくするためあったかタイツは持ってきていなかった(半ズボンタイプのあったか下着は持っていた)。そこで、半ズボン下着の上に、2枚あったトレッキングパンツを両方ともはいて、その上からレインパンツをはくことに。ちょっとモコモコするけれど、下半身が寒いよりは良いと考えました。

3つ目は、どうしようかなとも思いましたが、思い切ってリュックは置いていくことにしました。スマホとカメラはズボンのポケットに、ポットと行動食は上着のポケットに。サブバッグの中には予備の水と、暑くなって脱いだ荷物を入れるスタッフバッグをつめ、もちろん、予備の「写ルンです」も入れて。これで大分身軽になりました。私はこの時の身軽さがあまりに快適だったので、帰国後も普段からなるべく荷物は少なく、山でも荷物をできるだけ少なくするようになりました。案外なくても良いものを持っているものです。

準備の途中でも、ちょっと飽きて散歩に出たり、影キリマンジャロが出てると教えてもらって写真を撮りにいったりと、脱線しながら過ごしました。
ちなみにこの頃になると、メンバーと一緒に楽しむことと、自分一人の時間を持つことが、なにげに上手になっていたような気がします。一人で周囲を散歩することもあれば、こんなふうに写真を撮り合ったりおしゃべりしたりもある。こうやってストレスをためないようにしていたのが、健康にもよかったと思えます。

そして早めの夕食です。キボハットのダイニングはとても狭く、石造りのみっちりした空間はまさにイメージする高地の山小屋そのもの。さすがに4720mは気温が低く、体温保持のためにも意識してきちんと食べることにしました。このあたりから、パーティのメンバーでも、食欲が落ちたり、頭が痛くなったりする人も出てきました。私は幸いにもそのような症状はなく、本当に普段と同じコンディションで過ごすことができたのは、本当に恵まれていたのでしょう。

ごはんを食べ終えたら、早くも就寝。夜中の11時が起床時間なので、暗くして寝袋に入ります。しかしやはりトイレには行きたくなるもので。外に出ると、これまでのどのハットよりもすごい星空でした! 灯りが少なく、空気が澄んでいるからか、星の数が全然違う! ここでも冷たい月明かりが射しているのに、星も負けじと瞬いている! この夜空を見られただけで、もう登頂できなくても後悔はないわーと思ってしまうくらい、すごかったです。

そんな夜空に感心してるなんて、雑魚寝だしあまり寝られなかったのでは? と思うでしょう? ところがどっこい、時間は短かったけれど、結構ぐっすり寝たんです。私の旅の必需品、耳栓とアイマスクをしっかり装着して、寝付きが悪そうならシュラフに潜り込んで持参のキンドルでちょっとだけ本を読む。灯りがなくても読めるのが文明です。

目が覚めると、11時ちょっと前。何人かが起き始めたようで、物音がし始めました。私もシュラフから出て、身の回りを整えます。
その後は出発前の朝食。なんだか食べてばっかりいるようですが、少しでもおなかに入れていくことで、身体も温まります。そしてこんな朝早くから(というか夜中から)、おかゆを作ってもらいました! 昨年はビスケットだけだったそうで、私たちは本当にラッキー! はやりのチリソースで梅干しもどき味にし、温かいおかゆを食べる幸せ。カロリー摂取のために、お茶ではなく強い子のミロまで飲んでしまいます。これが単なるビスケットだけの場合とは、本当にその後のコンデションが異なると思います。

準備が整ったので、予定より少し早く出発となりました。
全員揃ってハットの裏の砂地を歩きはじめます。月明かりでヘッドランプがいらないほどでした。しかし凄い星空でもあります。そして寒い。そんな中をゆっくり、一列になって歩きます。ガイドがだいたい目星をつけて、私たちの途中に入ってくれます。Nさんは私のすぐそばにいて、出しっ放しのカメラを仕舞うように注意してくれました。冷たくなるとデジカメが起動しなくなるためです。
キリマンジャロ

隊長が、それぞれに声をかけていきます。深呼吸しましょ〜とか、いよいよですね〜とか、それはほんとマメに。平地よりもどんどん酸素が薄くなってきているところで、ずっと大きな声を出し続け、前へ後ろへと移動しながら皆の様子をチェックし、ガイドと連携してペースを保とうとしてくれるその能力には本当に驚きました。

30分〜1時間歩くごとに、休憩をとります。そのうち何度かは、大きなポットを持ってきてくれたガイドから、温かく甘い紅茶を注いでもらいました。手袋を2枚重ねていても、どんどん手足が冷えていきます。Nさんをはじめ現地ガイドたちは皆、休憩のたびに私たちの手を触って、冷えていると両手で挟んですごい勢いでさすってくれたりします。砂利の道を蛇腹に登っていくのですが、だんだん足を前に出すのにもものすごいパワーがいるようになります。

周囲にはだんだん、地面に貼付く万年雪も見えてきました。とにかく寒く、苦しい。フラッと列からはみ出してうずくまる人、気持ち悪くなってしまう人、頭痛や眠気に教われる人も続出。高山病症状が出た人にはガイドがついて、列から遅れていきます。私は幸いにも高山病症状が皆無でしたので、隊長の言う「とにかく右足と左足を交互に出していたら、いつか着くから!」の言葉を頭の中で繰り返し、つとめて呼吸を深く行いながら(といっても、息が吸えない!)、左右の足を順番に前に出すことだけに集中しました。

休憩も、一度座ると立ち上がるのに苦労し、でも座らずにはいられず、座っていると寒くなりと、どうして良いのかわからない状態。月も星も綺麗だけど、そろそろ太陽が出てくれないものかと思いました。5000mを超えると、背後にあったマウェンジ峰の後ろ側が見えます。あの高い山の高度を超えたということです。とにかくとにかく歩く。隊長が「声出していくぞー、絶対登頂するぞー」と運動部ばりに何度も声を張り上げ、できるだけの声で「おーー」と言う私たち。はたから見ると何の修行をしに来たんじゃ、という感じです。しかし、隊長がふざけて、「良い子のみなさーん、これが高所登山ですよ〜(笑)」「す、すげーーー(笑)」なんて会話をしながら歩いていたので、いくら苦しくても、テンションが下がるヒマはありませんでした。

マウェンジ峰の上に、明けの明星が見えました。目指すはギルマンズポイント(5685m)。そこで登山を終える人も多い、第一の頂上です。その手前には、よっこらしょと登らなくてはならない岩場があります。もちろん足なんかあがりませんから、ガイドがひっぱりあげてくれます。Nさんは、途中でずっと手を引っ張ってくれたり、休憩中も横にいてくれたり(人が横にいるとちょっと温かい)、もう何人も登頂させているからでしょう、細かい心遣いにものすごく助かりました。そしてそして、やっとこさ、ギルマンズポイントに到着したのは、6時ちょっと前。隊長曰く、想定以上に早い到着だったとのこと。

ギルマンズポイントでの1枚。笑顔ですが号泣しています

ギルマンズポイントでの1枚。笑顔ですが号泣しています

「ギルマンズについたぞー」という声にハッとして、最後の一歩を登り、隊長とハグをして「がんばったねーーー」と言われた瞬間、ビュっと涙が出ました。「着いたよ、やっと着いたよ〜、うえーん」と泣きながら喚いていたら、Nさんがハグしてくれて慰められました。他のメンバーともハグをして喜び、暗い中で感度の良いカメラを持っている方に写真を撮っていただいたり。とにかくこのポイントに到着したときのことを思い出すと、今でもジーンとします。ここで地平線からうっすらオレンジ色の空が見え始めました。

地平線には夜明けのグラデーション

地平線には夜明けのグラデーション

ここで、高山病症状が出た人を待ち、彼らが到着するとともに私たちは、本当の頂上に向けて出発です。ここから200m上にあるウフルピークへ。たったの200mです。しかしここはすでに、酸素が平地の半分しかない。そんな中で200mの高度を上げるのは、普通のことではありません。途中、ステラポイント(5730m)という平地があるのですが、最初はそこを頂上だと思って「案外近い!」と喜んでいたら、ガイドのNさんに「ちゃうちゃう」と注意されました。落胆しつつも、朝日を浴びて茜色に染まる氷河や、頂上エリアの真ん中にでっかく開く雪原のクレーター、日陰の大規模なつらら、半分氷になった雪道を歩きます。平なところはまだましですが、ちょっとでも登りになるともうヒーヒー。いつまでたってもウフルピークには到着しそうにもありませんでした。そんな中、Nさんが私のカメラを手にとり、サービスしようと思ったのか、勝手にそのへんの景色の写真を代わりに撮っていたのにちょっと笑いました。Nさんのこういう、ちょっと行き過ぎた”おもしろサービス”は、後々まで私たちの口の登るネタになりました!

Nさんが撮ってくれたつららの横のわたくし

Nさんが撮ってくれたつららの横のわたくし

(Nさん撮影)朝日が反射する雪の山壁

(Nさん撮影)朝日が反射する雪の山壁

やっと朝日が出てきた!

やっと朝日が出てきた!

見とれていたら、Nさんに「サングラスかけとけ!」と言われました

見とれていたら、Nさんに「サングラスかけとけ!」と言われました

ステラポイントから見た氷河

ステラポイントから見た氷河

雪がだいぶん少なくなってきているそうです。あと20年で消える説もあるらしい

雪がだいぶん少なくなってきているそうです。あと20年で消える説もあるらしい

朝日が登りきりました! こんな色、見たことない

朝日が登りきりました! こんな色、見たことない

ステラポイントで記念撮影。はしゃいでるように見えますがカラ元気です

ステラポイントで記念撮影。はしゃいでるように見えますがカラ元気です

途中から隊長が私の前についてくれたので、隊長の足元を見ながら真似して自分の足を出すようにしたら、若干進みやすくなりました。色々話してくれるのですが、もう返事もできず、ただ呼吸をするのが精一杯。まさに右と左の足を交互に出すことに集中。そして、やっとやっと、ウフルピーク(5895m)が眼の前に現れました! ギルマンズから2時間弱!

ウフルピークのあたりはこんな感じ。もう違う星に来たみたい

ウフルピークのあたりはこんな感じ。もう違う星に来たみたい

山頂に着いたらとたんに元気になって、山頂板の前で順番に写真をとりまくります。さっきまで泣きそうになっていたのに、みんな良い笑顔! ガイドのみんなとも登頂を喜びあい、はしゃぎました。ふとみると、隊長の持っていたウォーターキャリーの水が凍っています。登頂したては歩いてきたのと興奮しているのでそんなに感じませんでしたが、時間がたつにつれ、寒さにブルブル。同じパーティの友達と肩を寄せ合い体温をシェアしました。ただし天気が良く無風だっただけ、ラッキーです。

ウフルピークで。ポーズがステラポイントと同じところがカラ元気ぽい

ウフルピークで。ポーズがステラポイントと同じところがカラ元気ぽい

山頂には他のパーティもいましたが、混雑というほどでもない

山頂には他のパーティもいましたが、混雑というほどでもない

気圧で測るので高度がちょっとずれます

気圧で測るので高度がちょっとずれます

高山病症状が治まらず、ガイドに身体を支えられ、少し遅れてきた人もいましたが、パーティ全員が登頂という快挙です! キリマンジャロの登頂率は50%とのことですから、全員というのはほぼ奇跡! 遅れた人が登頂する瞬間は、まさに24時間テレビのマラソンのゴールのようで、ガイドは歌い、私たちは拍手し、その瞬間を撮影した動画があるのですが、何度観ても涙でちゃうです。ほんと、隊長とガイドの素晴らしさよ! 我々は全員が揃うまで息苦しさも忘れて一時間くらい山頂に滞在することにし、揃ったところで記念撮影ができました! 本当に幸せなことでした。なにせ、全員で登頂したおかげで我々は最終日まで、山頂の素晴らしさや登頂の感動を、気兼ねなく喜びあうことができたのですから! これ重要!!

真っ白の中に透き通る水色が見える氷河

真っ白の中に透き通る水色が見える氷河

真っ青な空と太陽と山頂。余計なものが何もない世界

真っ青な空と太陽と山頂。余計なものが何もない世界

頂上の景色は今まで見たどんな景色とも違う、地球を感じる風景でした。これを見るために、色々とがんばってきたんだなぁと、そこでまた涙。苦しい道のりでも、写真に写っている自分は常に笑顔なのですから、本当に素晴らしい経験をさせてもらったと、「させてもらった」以外の言い方がしっくりこないほど、この登頂はみなさんのお陰だったと感じています。

苦しいことなんて忘れちゃう

苦しいことなんて忘れちゃう

#15 Day5 頂上からのハードな下山
#16 Day6 さらばキリマンジャロ
#17 アルーシャへ移動
#18 Day7 サファリ〜帰国へ
#19(最終回) 持ち物いろいろ

キリマンジャロタンザニア登山

owner • 2016年3月6日


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